深センに乗り入れる香港地下鉄(MTR)延長計画:巨大新都市建設計画(3)

シリーズ化して詳細をお伝えしている、香港の巨大新都市建設計画の中には香港地下鉄(MTR)の大幅な拡張も組み込まれています。

例えば、深セン側の羅湖口岸と皇崗口岸に香港MTR「東鉄線」「北環線」延長線が乗り入れるなど、今まで課題となっていたアクセスの悪さを解消し、北部の発展を促進します。

「北部都会区発展策略」

10月6日に発表された香港行政長官、林鄭月娥(キャリー・ラム)氏による2021年施政報告の「北部都会区発展策略」。概要については前回の記事をご覧ください。

今後の香港と深センに大きな影響を与える「北部都会区発展策略」には、主に以下の計画が含まれます。

1、香港の中心を香港島から北に移動させる開発計画「新田科技城」

2、香港と深センの新たな入出境管理施設(口岸)開設と一地両検」

3、香港北部の地下鉄(MTR)路線「北環線」「東鉄線」延長計画

4、香港と深センの経済圏である前海を結ぶ新しい越境鉄道「港深西部铁路」、周辺湿地帯など約2,000ヘクタールの地域の環境保全

今回の記事は、香港北部の地下鉄路線(MTR)延長計画について取り上げます。

香港地下鉄「東鉄線」の羅湖周辺をカスタマイズすると共に、アクセスの面で課題が残っていた深センの皇崗口岸まで「北環線」延長線が乗り入れることになり、利便性が格段に向上します。

深セン側の羅湖まで路線延長し「羅湖南」駅を新設

まずは、紅磡(Hung Hom)駅から北の羅湖に伸びている「東鉄線」。羅湖口岸を「一地両検」化すべく、終点の羅湖駅の位置を深セン側にまで拡張します。そして周辺の羅湖・上水北・文錦渡エリアを発展させるため、東鉄線に新しい鉄道駅を設けることが計画されています。

新設される駅は、羅湖南駅(仮称)。上水駅と羅湖駅の中間に建てられる予定です。また、上水駅から分岐して落馬洲駅まで伸びる落馬洲支線上に「古洞」駅が新設されます。当駅は現在建設中の新たな路線「北環線」に新設される駅となります(後述します)。

建設中の鉄道路線「北環線」を大幅拡張

北部都市圏の統合と拡大は交通システムの主要なバックボーンである鉄道によって推進されます。香港行政府は前述の通り、深セン側の羅湖まで「東鉄線」を延長しますが、それだけでなく現在建設中の鉄道路線「北環線」も大幅拡張されます。

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「北環線」(錦上路ー古洞)は、2034年完成予定

屯馬線(Tuen Ma Line)上にある「錦上路」(Kam Sheung Road)駅から北に伸び、「新田」(San Tin)を通って「古洞」(Kwu Tung)駅までつなぐ北環線は2034年完成予定です。

今回の発表により、この北環線は新田から皇崗まで伸びる新たな支線と、古洞からさらに東に伸びる北環線東延が誕生します。

「北環線支線」新設

この「北環線支線」は、皇崗口岸に向かうバスターミナル「新田公共運輸交匯處」があることで有名な新田から皇崗口岸まで伸びる新たな支線です。途中で落馬洲(河套地区)「洲頭」「港深創科園」を経由しますが、周辺は先日お伝えした「新田科技城」のエリアとなり、地下鉄一本でスムーズに深センまで到達することになります。

皇崗口岸までバスを利用された方はご存知かと思いますが、当口岸は香港側と深セン側の距離が最も長く、香港側で出境手続きを完了後に、再度バスに乗り深セン側の口岸まで移動する必要がありました。当路線が開通するとこのような不便な状況からも解放されることになります。

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「北環線東延」でさらに東へ

そして、今回の路線新設で最も大きな拡張となるのが「北環線東延」です。北環線の終点となる古洞駅(東鉄線も停車予定)から、上水駅と羅湖駅の間に新設される「羅湖南」駅を抜けて東側エリアを一巡し、打鼓岭、皇后山を経由して粉嶺まで南下する路線です。

当路線により、羅湖、文綿渡、香園围エリアが地下鉄路線でつながることになり、今までアクセスの悪かった文錦渡口岸や蓮塘口岸の香港側(南側)の利便性が格段に向上します。

特に、以下の地図のオレンジ色のエリアの開発ポテンシャルが引き出され、当エリアが商業および住宅開発のための総合的な開発拠点となります。各開発地域の住民に便利な交通網を提供し、深セン側からの境界を越えた雇用の選択肢を誘致することも可能になります。

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新駅の建設により、商業と住宅の統合開発が促進されます。特に羅湖鐵路貨運場などの鉄道関連敷地周辺に大規模な住宅や商業施設が建設される予定で、この開発により約9,000~10,500戸の住宅が建設されることになります。

羅湖(Lo Wu)と文錦渡(Man Kam To)の境界通過点となる既存の土地は、(貨物機能が他の口岸に奪われるため)住宅や商業開発のために再開発されます。将来的には九龍や香港島に通勤しなくてもこの地域で仕事をすることができるようになる、というわけです。

一連のシリーズにしてご紹介してきた「北部都会区発展策略」、最終回の次回は香港と深センの経済圏である前海を結ぶ新しい越境鉄道「港深西部铁路」について、そして北部周辺湿地帯など約2,000ヘクタールの地域の環境保全についてお伝えします。


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