【吾友コンサル】News Letter 2025/04 米中貿易摩擦を背景とした日中関係の展望‌

深セン・広東省を中心に活躍されている吾友コンサル(吾友咨询)の隔月News Letterです。

今回は、トランプ政権の高関税による米中貿易摩擦や日本の対中投資プロジェクトの変化、そして日中関係の展望について取り上げられています。特別寄稿では光通信部品関連事業を手掛ける「センコーアドバンス」社より中国の光通信市場の解説が、そして直近のトピックスでは、外資系企業の誘致に関する中国の政策について紹介されています。

米中貿易摩擦を背景とした日中関係の展望‌

吾友コンサルティング総経理  劉真(Vivian Liu)

トランプ政権が2025年1月に発足して以降、‌米中貿易戦争‌は激化の一途を辿り、国際社会の注目を集めている。米国は3ヶ月足らずで中国製品への関税率を10%から20%、34%、84%、125%へと段階的に引き上げ、‌2025年4月現在245%に達した‌。これに対し、中国は「戦いを望まないが恐れない」という立場を明確にしつつ、4月12日に対米輸入品全品目に125%の関税‌を賦課する方針を発表し、「米国が追加関税を継続する場合、中国は無視する」と強硬に表明した。

トランプ政権の関税政策は中国に限定されたものではなく、グローバル展開‌が特徴である。「対等関税」を名目に、日本、EU、インドなどの主要貿易相手国に対し課税を実施している。そのうち、日本に対しては、対米輸出商品に24%の関税を賦課するとともに、自動車・部品への25%特別関税を維持する。この政策により、日本の自動車株は単日5%超の急落を記録し、日本政府は緊急対策を発動せざるを得なくなった。

当社は長年にわたり日系企業を支援するコンサルティング企業として、トランプ政権の関税政策下における‌日中関係の将来像‌を特に注視している。

昨年度4月に日本政府が公表した『外交青書』(2024年版)では、5年ぶりに「日中戦略的互恵関係」が‌再掲された‌。同文書は「多くの未解決問題が存在する」としつつも、建設的で安定的な関係維持の重要性を強調している。

米国が自動車・半導体産業などに賦課する高関税の影響を受け、日中韓3カ国は2025年3月末にFTA交渉を再開‌した‌。‌これは‌東アジア地域、ひいてはアジア太平洋地域の経済統合推進‌において重要な意味を持つ動きと評価されている‌。

民間交流面では、中国が2024年11月より観光・ビジネス・親族訪問を目的とした日本人短期滞在ビザ免除制度を再開‌し‌、滞在期間を延長‌した‌。日本側も中国富裕層向け10年有効マルチビザの新設、3年有効ビザの申請条件緩和、団体観光ビザの滞在期間延長等の政策を実施‌している‌。これらの措置は両国民間交流・経済往来の拡大に寄与し、経済回復‌を後押しする効果が期待される‌。

日本財務省が公表した『2024年貿易統計速報』によれば、2024年の対中輸出額は18.9兆円(前年比6.2%増)で輸出総額の17.6%を占め、対米輸出(19.9%)に次ぐ規模。輸入額は25.3兆円(同3.6%増)で、中国は16年連続で日本最大の貿易相手国となった。

コンサルティング企業としての弊社観察によれば、近年、中国における労働力・土地コストの上昇と地場企業の技術革新が進む中、一部の伝統的な日系企業が、事業転換や撤退を‌余儀なくされるのは事実だが‌、直近のハイテク・環境技術分野での対中大型投資も‌顕著である。‌パナソニックの4年間18事業拠点への新規投資、電気硝子・厦門工場の5度にわたる増資(累計80億元・約1600億円)、無錫村田電子の新工場着工(25.5億元投資)、ミスミの「新質生産力」構想に基づくmeviy加工サービス展開、ホンダの新能源車工場竣工などの重大投資プロジェクトが挙げられる。

こうした両国間の緊密な経済連携を背景に、日本政府は米国主導の「対中経済包囲網」への参加に慎重な姿勢を示している。

弊社の見解では、新たな国際秩序の下において、日中両国間には依然として多岐にわたる提携可能性が存在する。環境技術・医療機器・高齢者ケアシステム等における日本の技術優位性は中国の膨大な市場ニーズと補完関係にある。トヨタ生産方式(TPS)や稲盛和夫氏が提唱した「アメーバ経営」(華為技術・中興通訊・格力電器・海爾集団等が導入済み)など、日本の先進的な経営哲学は‌、内部統制制度・管理水準・従業員福利厚生においてまだ改善余地のある中国地場企業のために有益な知見を提供できる‌。

中国企業が、「匠の精神」による技術革新と経営理念の構築を通じ、優秀な百年企業の育成を‌図ることを切に願う‌。また、両国間の相互理解深化と戦略的提携関係の進展が、アジア太平洋地域の安定と繁栄に寄与することを‌強く期待してやまない‌。

<特別寄稿>

西口雄貴

扇港元器件(深圳)有限公司 総経理

光通信技術の最前線とセンコーアドバンスの挑戦

弊社紹介

センコーアドバンスは、三重県四日市市に本社を置く専門商社です。弊社は「光通信部品関連事業」と「自動車・産業機器部品関連事業」の2つの事業を主軸に、世界10ヵ国・16拠点でビジネスを展開しています。中国では深圳と上海に拠点を置き、両拠点合わせて約120名が在籍しています。特に深圳事務所は2003年の開設以来、光通信部品関連事業のサプライチェーン・R&Dのグローバル拠点として中心的な役割を果たしています。

光通信事業の取り巻く環境と弊社の発展

光ファイバーの技術自体は1970年頃から研究され始めれていましたが、1980年代に商業化されました。今日に至るまで、技術の発展と共に様々な分野で活用・応用されています。

  • 1980年代:光ファイバー通信の元年とされる1970年以降、光ファイバーの製造技術が進化し、1980年代には光通信システムが商業化され始めた
  • 1990年代:インターネットの普及により、データトラフィックが爆発的に増加し、光通信ネットワークの需要が急速に拡大した
  • 2000年代初頭:ドットコムバブルの崩壊により一時的な低迷期がありましたが、FTTH(Fiber To The Home)サービスの普及により、家庭でも高速インターネットが利用可能になった
  • 2000年代後半:4G技術の導入により、モバイル通信のバックボーンとして光ファイバーが重要な役割を果たすようになった
  • 2010年代:5G技術の導入により、さらに高速で安定した通信が求められ、更に光ファイバーの需要が増加した
  • 2020年代:AIや機械学習の普及に伴い、大規模なデータセンターの建設が進み、光通信技術がデータ処理能力の向上に寄与している

中国の光通信市場は急速に成長しており、特に生成AIの需要拡大に伴い、光通信技術の重要性が大幅に増しています。中国政府も本産業への発展を強力に支援しており、「東数西算」プロジェクトや「双千兆都市」戦略などの政策が実施され、光通信技術の普及と市場拡大を促進している背景があります。

その中でセンコーアドバンスは1990年代に光通信事業に参入して以来、光通信の接続に使用されるコネクター製品の販売を専門とし、開発・設計・販売まで一貫して行うトータルソリューションを提供しています。その結果、コネクター販売額として世界No.2のシェアを誇ります。販売先はデータセンターや通信インフラ、医療機器、航空機など多岐に渡ります。

深圳事務所に所在するR&Dラボ(クリーンルーム)の様子

今後の展望

2022年7月には高精度なプレス加工技術とそれを活かしたマイクロ光学部品の設計・製造に強みを有する、世界でも屈指のプレーヤーであるCUDOFORM社の事業取得を行いました。これにより、半導体製造に必要不可欠なCo-packaged Opticsの技術への応用が可能となりました。他にも3D/VRイメージング、LIDAR、デジタルヘルスとセンシングなどの高成長分野でも活用が期待されています。この新しい武器を携え、①製品ラインの拡充、②グローバル市場での競争力強化、③環境に配慮した持続可能なビジネスモデルの構築、この3つを今後の事業戦略の核と位置づけ経営を行っていきたいと考えています。

直近のトピックス

外国投資は、中国が高水準の対外開放を推進する上で重要な要素であり、新生産力の発展と中国式現代化の実現において重要な役割を果たしている。こうした状況を踏まえ、外資誘致・維持の強化を図るため、商務部と国家発展改革委員会は2025年2月に「2025年度外資安定化行動計画」を策定・公表発表した。

本計画は下記4つの重点領域において20項目の政策措置を講じている。
①自主的開放の段階的拡大
②投資誘致水準の高度化
③開放型プラットフォームの機能強化
④サービス保障体制の整備

主な施策は次の内容を含む。
▷ 通信・医療・教育分野における開放パイロット事業の拡大
▷ 外資系企業の国内資本市場参入促進
▷ 外資系企業の国内再投資への支援強化
▷ 奨励外商投資産業範囲の拡充
▷ 外資系投資会社の国内融資規制撤廃
▷ 多国籍企業の投資ホールディングス設立奨励
▷ 外国投資家による国内M&Aの円滑化促進

吾友コンサルティングについて

吾友コンサルティングは中国で活躍する日本企業を対象に税務・財務・ビジネスのコンサルティングサービスを提供している会社です。みなさんの日々の課題や悩みをしっかり伺い、町医者のように親身になって的確なアドバイスを行っています。

当社の起業理念は、中国で活動する海外企業を中心にビジネスの成長を応援することです。日頃コンサルティングを通じて、多くのお客様がビジネスの小さな成功に止まらず、中国という国に向き合い、その特性などを深く理解した上でタイトに繋がろうとする姿勢を感じています。深い理解あればこそ、より大きな成功に結び付いていると思います。

皆さまへの更なる応援のために、当社総経理、Vivian Liuが業務を通じて感じたり、考えたことを記し、発信させていただくことにしました。当面、隔月です。

テーマに関し、文化・社会的な内容に加えて、適宜ビジネスの成功や失敗からの学びなど実践的な内容もカバーしていくつもりです。

また、当社と提携している会社、当社のお客様または知り合いなどにも寄稿をいただいております。

ぜひよろしくお願いいたします。

Vivian Liu 連絡先:

vivian.liu@wuyou-consul.cn

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