香港ー深センに新たな入出境管理施設（口岸）開設へ：香港巨大新都市建設計画（2）

2021-10-18 2021-10-19 7分14秒

長らく課題となっていた、深セン側と香港側で隔たりの起きている入出境管理施設（口岸）の一体化が、先日発表された香港の巨大新都市建設計画でついに実現します。

また、香港北方の新たな科学技術都市で働く人々がスムーズに行き来できるように、新たな口岸「福鄰」小口岸も新設されることになります。

1 「北部都会区発展策略」
2 入出境管理は「両地両検」から「一地両検」へ
3 「福鄰」小口岸を新設
4 大鵬半島にも新口岸建設進行中
5 蛇口／深圳湾口岸では越境ヘリコプター計画進行中

「北部都会区発展策略」

10月6日に発表された香港行政長官、林鄭月娥（キャリー・ラム）氏による2021年施政報告の「北部都会区発展策略」。概要については前回の記事をご覧ください。

香港の新都市「新田科技城」ー深センと共にイノベーションを生み出し雇用創出へ：香港巨大新都市建設計画（1）

今後の香港と深センに大きな影響を与える「北部都会区発展策略」には、主に以下の計画が含まれます。

１、香港の中心を香港島から北に移動させる開発計画「新田科技城」
２、香港と深センの新たな入出境管理施設（口岸）開設と「一地両検」化
３、香港北部の地下鉄（MTR）路線「北環線」「東鉄線」延長計画
４、香港と深センの経済圏である前海を結ぶ新しい越境鉄道「港深西部铁路」、周辺湿地帯など約2,000ヘクタールの地域の環境保全

今回の記事は、当計画により新たに開設される香港と深セン入出境管理施設（口岸）と、現在は深セン側と香港側で隔たりの起きている口岸の一体化「一地両検」化について紹介します。

入出境管理は「両地両検」から「一地両検」へ

現在は「両地両検」

現在のところ香港と深センの入出境管理施設（口岸）は、深圳湾口岸と（現在建設中の）皇崗口岸以外はそれぞれの位置が離れている「両地両検」スタイル。

そのため、まずは香港側の出境手続きが終わると、時にはバスに乗って移動し深セン側の入境手続きを行うなど時間も労力もかかります。

香港MTRを延長し、羅湖口岸を「一地両検」化

キャリー・ラム行政長官は、羅湖で香港と深センの出入境管理施設を共同設置すること（一地両検）にも言及しています。

口岸は、深センと香港を行き来する人や物が必ず通る場所ですが、ここで行われる膨大な交通量は「深センー香港口岸経済圏」の基盤です。通関が便利になればなるほど効率的な流れとなり、この経済圏の発展に弾みがつきます。

越境旅客の中で最も利用者が多く、最も混雑しているのが羅湖の入出境管理施設ですが、この効率を高めるために香港行政府と深セン市は、香港側の地下鉄（MTR）東鐵綫最終駅を深セン側の羅湖まで延長し、深セン側に入境管理局と税関施設を併置する事を検討中です。

文錦渡口岸も「一地両検」化

文錦渡出入境管理施設も現在は「両地両検」となっていますが、これを深セン側に共同設置し「一地両検」化を検討中。これにより文錦渡エリアの土地開発が見直され、農村部の土地利用が進みます。

「福鄰」小口岸を新設

新都市「新田科技城」（San Tin Technopole）の建設に伴い、この深セン／香港の科学技術都市で働く人々のために、深セン側の「深方科創園区」内に「福鄰」小口岸を新設します。

「小口岸」という言葉の通り規模は小さいものの、毎日境界を越えてそれぞれのエリアで働くワーカー達がスムーズに越境できるようにするためのものとなります。そして深圳河には歩行者・自転車用の橋が架けられることに。ということは、自転車で越境し香港・深セン間を往来できるようになるのかもしれません（！）

大鵬半島にも新口岸建設進行中

他にも、現在大鵬半島にて「南澳旅游专用码头」という船用のターミナルが建設計画進行中なのはあまり知られていませんが、これも新設される口岸で今回の大規模なプロジェクトの一部として言及されています。

深センと香港を結ぶ東側の水路が開放され、観光の面でも国際的なアクセスが向上します。

蛇口／深圳湾口岸では越境ヘリコプター計画進行中

西側の口岸となる蛇口フェリーターミナルおよび深圳湾口岸では、越境ヘリコプター機能を追加する計画が進行中。実証実験もすでに行われているようです。

機能的な複合ポートを開発することで、広州と深センを結ぶ30分経済圏の構築に寄与します。他にも、深圳宝安空港の福永フェリーターミナルを香港・マカオからのヨットに開放することも検討されています。

深センの口岸における輸出貿易総額は28年連続で国内第1位を記録し、輸出入額は国全体の4分の1近くを占めており、国内外の貿易を結ぶ重要な拠点です。

2021年8月時点で、深セン税関エリアの輸出入全体の通関時間はそれぞれ7.30時間、1.05時間で、2017年に比べてそれぞれ71.93％、91.18％圧縮されています。港湾業務のペーパーレス化や入国検査証明書や検疫証明書などの書類の作成・発行の効果が高まり、情報化レベルの向上も見られているとのことで、このような口岸の地道な取り組みも今後の深センー香港の経済を支えるものとなります。

次回は、香港北部の地下鉄路線（MTR）延長計画、そして周辺湿地帯など約2,000ヘクタールの地域の環境保全について取り上げます。アクセスの面で課題が残っていた深センの皇崗口岸まで地下鉄「北環線」延長線が乗り入れることになり、利便性が格段に向上します。