【全人代】中国は再び英語の必修科目廃止を検討

先日閉幕した、第13期全国人民代表大会 第4回会議(NPC)および第13期全国人民政治協商会議 第4回会議(CPPCC)の中で、小中学生の英語必修科目の廃止が提案されました。

英語を必修科目から外すという提案は過去にも行われたことがあり、ネット上では様々な意見が出ています。

話題の新刊!
ITエンジニアのための中国語入門
いまやIT超大国となった中国。中国IT企業とのやりとりで中国語を使ってみよう!日常会話からビジネスシーン会話、プログラミング開発中の会話まで、最新の中国語事情に沿って多彩なフレーズを収録。

敏捷开发=アジャイル開発、深度学习=ディープラーニング、物联网=IoT、区块链=ブロックチェーン、远程工作=リモートワーク、范围管理=スコープ管理など、最新のIT用語もバッチリ習得できます。中国企業で働く日本人エンジニア、中国企業と取引のある日本人エンジニアは必携です!

細谷 竜一 (著), 中野 志穂 (著)

小中学生の英語必修科目廃止提案

China Dailyによると、小中高校のカリキュラムから英語の授業を削るというこの提案を行なったのは国民党副委員長で長沙亜里中学(Changsha Yali Middle School)の校長を務めるLiu Weichao氏と、第13期全国委員会のメンバーであるXu Jin氏。

提案理由

Xu Jin氏は、大学卒業者のうち仕事で英語を使うのは10%にも満たないことを根拠にこの提案を行いました。また(英語よりも)体育や音楽、芸術にもっと力を入れるべきであり、さらにはAIリアルタイム翻訳ソフトのような技術が言葉の壁をなくし、翻訳者はすぐに淘汰される職業になるだろうと主張。さらにその他の外国語も全国の大学入試の必修科目に含めるべきではないと述べています。

意見は拮抗

もちろん反対意見もあります。英語を学ぶことで生徒が批判的思考(critical thinking)や文化的認識を身につけることができること、グローバルな舞台での開放性を目指している中国当局にとって今回の方針は後退となるとの意見が出ています。また、英語を必修科目から外すと、全国統一の大学入学試験である「高考(ガオカオ)」の見直しも必要になります。

中国青年報が行った世論調査によると、43%の回答者が削除を支持し、48%の回答者がグローバル化には英語が不可欠だと考えていることが分かりました。

China Dailyは、以下のような意見を紹介しています。

「親は二度と使わないスキルのためにそれらの学校にお金を浪費している」

「子供たちは学校で英語を教えてもらっているはずなのに、「こんにちは」「私の名前は」としか言えない」

「世界の他の国々に追いつくには、多くの人が現在使っている言語を学ぶしかない」

「最新の研究の多くは英語で書かれている。その研究が初めて発表されたときに読めなければ、常に一歩遅れをとってしまうことになる…今こそ、世界の工場から世界の研究都市へと移行する時だ」

「共通の言語を持つことで、通訳では決して実現できない2人の距離が縮まる」

「いくらテストの点数が高くても、文法がしっかりしていても、言葉を使ってきちんとコミュニケーションが取れなければ、無駄な努力。基本的な英語の読み書きと理解ができるだけで十分」

「第二言語を知っていることで、グローバルな思考スタイルを身につけたり、世界からインスピレーションを得たりすることができる」

世界の国々の中でも、圧倒的な数の中国人学生が海外の大学に進学しています。ユネスコによると、2018年に中国は100万人弱の学生を海外に留学させましたが、北米と西ヨーロッパには76万6,383人の学生が留学しました。

Image via ThatsShenzhen

英語の必修科目を削除することで、今後は英語の課外授業を受ける余裕のある「エリート家庭」が、競争の激しい教育システムの中でまた不当な優位性を得ることになるのではないか、と考える人も多いそうです。

以前にも英語の削除が検討されたことも

中国が世界貿易機関(WTO)に加盟した2001年には英語が学校の必修科目となりましたが、以前にも英語を主要科目から外すことが検討されたことがあるのだそう。

例えば2014年の両会で、中国政府は高考の総得点に英語の占める割合を下げるか、試験から英語を完全に取り除くことが提案されました。教育省は外国語を削除する代わりに、英語の試験を1年間に2回受け、高い方のスコアを提出することで6月の受験生のプレッシャーを和らげることにしました。

また2017年には、中国の法律家でYuhua Education Group(宇华教育集团)の取締役が、英語を高考の選択科目の1つにするよう求めたと報じられました。

約40万人の英語教師が中国内に

中国の英語研修市場に関するBusinesswire.comのレポートでは、2020年から2024年までの複合年間成長率を695億米ドルと推測しています。WES(World Education Services)によると、2019年12月の時点で中国では約40万人の英語教師が雇用されており、中には違法に働いている者もいると報告しています。とはいえ2020年の新型コロナウイルス流行により教師の数は減少している模様です。

Image via ThatsShenzhen

深センでも英語教師の数はとても多く、多くの英語話者が教師によって生計を立てています。個人的には英語を主要科目から外すのは良い判断とは思えませんが、今後の展開次第では中国国内にいる外国人の数はもっと減ることになるでしょうね。

ちなみに、世界最大の統計調査データプラットフォームを提供するStatistaによると、世界で最も話されている言語は英語で13億5,000万人弱、2位は北京語で11億2,000万人となっています。


Source:

ThatsShenzhen: China Considers Dropping English as Core Subject, Again

chinadaily.com.cn: Should English be removed from school curriculum?

深センといえばこの本!
プロトタイプシティ 深センと世界的イノベーション
「まず、手を動かす」が時代を制した。次にくるメガシティはどこか!?
スーパーシティよりも、まずプロトタイプシティ! テンセントが未来都市を作る街、新時代都市・深セン。 成功の鍵は“プロトタイプ駆動”にあった。

高須 正和 (編集, 著), 高口 康太 (編集, 著), 澤田 翔 (著), 藤岡 淳一 (著), 伊藤 亜聖 (著), 山形 浩生 (著)
「ハードウェアのシリコンバレー深セン」に学ぶ−これからの製造のトレンドとエコシステム (NextPublishing)
本書は「ハードウェアのシリコンバレー」として世界の注目を集める広東省深セン市がどのような変遷をたどって今の地位を築いたのか、2001年から深センで電子機器製造に従事する筆者の人生を通じて解き明かします。

藤岡 淳一 (著)
ハードウェアハッカー ~新しいモノをつくる破壊と創造の冒険
これまでの常識を破壊し,自らの手で新しいものを生み出していくための考え方や仕組みを,世界的なハードウェアハッキングの第一人者が実体験とともに解説。世界のイノベーションの中心地の1つである深圳におけるビジネスの仕組みや知財の考え方,ニセモノ製品の裏側,子供でも作れるシール式電子回路Chibitronicsなど刺激的な話題を凝縮した驚異の書。エドワード・スノーデン,伊藤穰一(MITメディアラボ所長)ほかテクノロジー業界の著名人の推薦続々!

アンドリュー“バニー”ファン (著), 高須 正和  (翻訳), 山形 浩生 (翻訳) 
メイカーズのエコシステム 新しいモノづくりがとまらない。 (OnDeck Books(NextPublishing))
iPhoneが製造されている中国の工業地帯、深圳。そして最も偽物のiPhoneが「発明」されているのも、深圳。「製造業のハリウッド」と呼ばれるかの地では、秋葉原の30倍の電気街をもち、100倍のベンチャー企業が最先端の電子ガジェットを作り、世界中にクラウドファウンディングで販売しています。そんな「IoT(モノのインターネット)」の中心を、高須正和・井内育生・きゅんくん・江渡浩一郎らが渾身のレポート。日本と深圳で自らベンチャーを行う小笠原治・藤岡淳一も寄稿。解説:山形浩生。

高須 正和 (著)
これ一冊でもう迷わない!!問屋街オタクが教える深セン電気街の歩き方(探検MAP及び書籍内リンク付き): 中国深センの巨大電気街「華強北」探検MAP 問屋街オタクシリーズ Kindle版
深センは中国の経済特区のうちの一つであり、香港に隣接しているという特殊性に加え、中国のシリコンバレーといわれるほど著名なIT企業や最先端技術を有する企業が集結しています。その窓口である華強北電気街へぜひ足を運んでみてください。期待を裏切らない驚きが待っています。

鈴木 陽介  (著)
これ一冊あれば大丈夫!!広東アパレル問屋街15ヶ所一挙大公開!(探検MAP及び書籍内リンク付き): 中国広州、中山、東莞、深センのアパレル問屋街探検MAP 問屋街オタクシリーズ Kindle版
本書は中国広東省にあるアパレルの問屋街をまとめて紹介しております。 その数なんと、15ヶ所!本書を通じて、広東省にある問屋街の多様さをぜひご体感ください!

鈴木 陽介  (著) 
問屋街オタクの深セン起業「ウラ話」: 華強北でハースタしています!! 問屋街オタクシリーズ Kindle版
本作は、問屋街オタクの直近3年間の奮闘記であり、修行録であり、舞台裏についてのお話しです。 さらに著者の過去の知見も加えた自伝記のような構成となっております。

鈴木 陽介  (著) 

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事