深セン、中国で初めて香港人向けにデジタル人民元テストを開始

深セン市は、中国本土にいる香港人を対象としたデジタル人民元のテストを開始しました。今後は深センー香港のクロスボーダー流通だけでなく、2022年の北京オリンピックに向けて外国人にも利用可能にし、デジタル人民元のグローバル化も視野に入れています。

中国がここまで動きを活発化させている背景には国際情勢が大きく関係しているようです。

Cybozu Conference オンラインセッション開催!(8/18)

香港人向けのデジタル人民元テストを実施

先日、深圳市人民政府と中国人民銀行深圳中心支行は、デジタル通貨の研究開発を着実に推進するため、羅湖区人民政府が中国银行股份有限公司および中国银行香港股份有限公司と協力して、中国本土にいる香港人を対象としたデジタル人民元(数字人民币)のテストを実施しました。

香港人に対するデジタル人民元の実証実験については2020年から検討されてきましたが、テストは今回が初めてです。

今回の主なテスト対象者は以下の2種類。

  1. 深センを頻繁に行き来する香港人で「香港居民来往内地通行证」により本名認証できる人
    本土の旅行許可証で本人確認をした上で、1日の取引限度額が5万元以下の電子ウォレットを登録可能
  2. 深センをたまに訪れる香港人で「香港居留証」のみを所持(本土の旅行許可証を持っていない人):
    香港の携帯電話番号から匿名で5種類のデジタル人民元ウォレットを開設可能(利用可能な金額は少ない)

「両替が便利で支払いもスムーズ」

香港在住で、深センで長く働いているあるテストユーザーは、宝飾屋でデジタル人民元の支払いを体験した際「両替が便利で支払いもスムーズだと感じています」と語ったそう。

今回のテストでは、深センを行き来する香港人がデジタル人民元を使って国境を越えた決済シナリオを構築することに成功し、香港人が深センで消費する際の国境を越えた取引コストを削減するための基礎を築きました。

Image via 人民网

これまでのところ、このテストは中国本土での小売店での支払いに限られていますが、次のステップでは深センと香港でデジタル人民元のクロスボーダー流通を促進していく方向のようです。

香港ではすでに人民元が広く使われているため、デジタル人民元は現金に代わるものとなり、国境を越えた買い物をしなければならない人々に新たな支払いの選択肢を提供することになります。

2022年の北京オリンピックに向けて外国人にも拡大へ

そして、中国ではデジタル人民元の世界進出にも視野に入れています。 中央銀行は最近、一部の銀行や電子商取引プラットフォームを含む数十社の企業と提携し、中央銀行のデジタル通貨を広範囲にテストしています。これには、2022年の北京冬季オリンピックで、外国人のオリンピック来場者や競技者がデジタル人民元を使用するシナリオを含む詳細なテストを行うことも含まれているのだそう。同時に海外でのテストも計画されているとのこと。

中国人民銀行が8月に発表した最新の人民元国際化年次報告書によると、香港は2019年も最大のオフショア人民元市場(=中国本土外で流通する人民元市場)であり、8兆8,300億元(1.3兆ドル)に相当するクロスボーダー人民元の決済と収益の44.9%を決済しており、 香港の決済額は次点のシンガポールの10.3%を大きく上回っています。

先日発表された中国の5ヵ年計画には「デジタル通貨の開発を着実に進める」という提案が含まれています。 当サイトでも以前紹介したように、深センをはじめとするいくつかの都市ではデジタル人民元を使った数百万元のクーポン券を地域住民に提供しており、デジタル人民元の展開を加速中。

商務部が8月に発表した計画によると、今後数年間で、広東省・香港・マカオの大湾区エリアを含むいくつかの地域で、デジタル人民元のテストを拡大する予定です。デジタル人民元の運用エリアを拡大する意図が明確に現れています。

デジタル人民元のグローバル化により、米ドルに対抗

3月27日に中国とイランの間で締結された25年間の包括的戦略協定の中には、石油の人民元決済およびデジタル人民元決済の記載が盛り込まれました。他にも現在はロシア、パキスタン、ナイジェリア、アルジェリアなど、30カ国以上の国が人民元を決済通貨として採用中で、中国は世界中で米ドルの覇権に対抗しようとしています。

Image via 网易新闻

"香港の金融センターをアメリカから守る"

今回の香港におけるデジタル人民元のテストは、中国にとって非常に重要な意味を持っています。

今後米国が、香港の金融センターの重要な「足」である香港ドルをSWIFT(国際銀行間通信協会/Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication)から外すことになると、外国人投資家は香港ドルを自由に交換できなくなり、米ドルの流入も瞬時に止まります。香港ドルと米ドルを結びつける為替制度は完全に切り離され、香港ドルの価値がなくなってしまい、香港の金融センターが絶望的な状態になってしまいます。

中国はこの点を警戒しているため、香港でのデジタル人民元のテストを加速させており、同時にグローバル化への技術的、制度的な経験を蓄積中です。

世界の外国為替取引に占める過去6年間の割合は成長率300%を超えている人民元。今回の香港人に向けたデジタル人民元のテストは、広い視野で見ると今後の国際情勢に大きな影響を与えるものであることが分かります。


Source:

深圳商报:深圳面向香港居民开展数字人民币跨境支付测试

网易新闻:香港人先用上了数字人民币,历史性的时刻来了!下一步是征服全球

网易新闻:货币反击加速 ! 数字人民币香港测试,有何战略意义?

人民网:深圳在全国率先面向香港居民开展数字人民币测试

深センといえばこの本!
ITエンジニアのための中国語入門
いまやIT超大国となった中国。中国IT企業とのやりとりで中国語を使ってみよう!
日常会話からビジネスシーン会話、プログラミング開発中の会話まで、最新の中国語事情に沿って多彩なフレーズを収録。中国企業で働く日本人エンジニア、中国企業と取引のある日本人エンジニアは必携です!
細谷 竜一 (著), 中野 志穂 (著)
プロトタイプシティ 深センと世界的イノベーション
「まず、手を動かす」が時代を制した。次にくるメガシティはどこか!?
スーパーシティよりも、まずプロトタイプシティ! テンセントが未来都市を作る街、新時代都市・深セン。 成功の鍵は“プロトタイプ駆動”にあった。

高須 正和 (編集, 著), 高口 康太 (編集, 著), 澤田 翔 (著), 藤岡 淳一 (著), 伊藤 亜聖 (著), 山形 浩生 (著)
「ハードウェアのシリコンバレー深セン」に学ぶ−これからの製造のトレンドとエコシステム (NextPublishing)
本書は「ハードウェアのシリコンバレー」として世界の注目を集める広東省深セン市がどのような変遷をたどって今の地位を築いたのか、2001年から深センで電子機器製造に従事する筆者の人生を通じて解き明かします。

藤岡 淳一 (著)
ハードウェアハッカー ~新しいモノをつくる破壊と創造の冒険
これまでの常識を破壊し,自らの手で新しいものを生み出していくための考え方や仕組みを,世界的なハードウェアハッキングの第一人者が実体験とともに解説。世界のイノベーションの中心地の1つである深圳におけるビジネスの仕組みや知財の考え方,ニセモノ製品の裏側,子供でも作れるシール式電子回路Chibitronicsなど刺激的な話題を凝縮した驚異の書。エドワード・スノーデン,伊藤穰一(MITメディアラボ所長)ほかテクノロジー業界の著名人の推薦続々!

アンドリュー“バニー”ファン (著), 高須 正和  (翻訳), 山形 浩生 (翻訳) 
メイカーズのエコシステム 新しいモノづくりがとまらない。 (OnDeck Books(NextPublishing))
iPhoneが製造されている中国の工業地帯、深圳。そして最も偽物のiPhoneが「発明」されているのも、深圳。「製造業のハリウッド」と呼ばれるかの地では、秋葉原の30倍の電気街をもち、100倍のベンチャー企業が最先端の電子ガジェットを作り、世界中にクラウドファウンディングで販売しています。そんな「IoT(モノのインターネット)」の中心を、高須正和・井内育生・きゅんくん・江渡浩一郎らが渾身のレポート。日本と深圳で自らベンチャーを行う小笠原治・藤岡淳一も寄稿。解説:山形浩生。

高須 正和 (著)
これ一冊でもう迷わない!!問屋街オタクが教える深セン電気街の歩き方(探検MAP及び書籍内リンク付き): 中国深センの巨大電気街「華強北」探検MAP 問屋街オタクシリーズ Kindle版
深センは中国の経済特区のうちの一つであり、香港に隣接しているという特殊性に加え、中国のシリコンバレーといわれるほど著名なIT企業や最先端技術を有する企業が集結しています。その窓口である華強北電気街へぜひ足を運んでみてください。期待を裏切らない驚きが待っています。

鈴木 陽介  (著)
これ一冊あれば大丈夫!!広東アパレル問屋街15ヶ所一挙大公開!(探検MAP及び書籍内リンク付き): 中国広州、中山、東莞、深センのアパレル問屋街探検MAP 問屋街オタクシリーズ Kindle版
本書は中国広東省にあるアパレルの問屋街をまとめて紹介しております。 その数なんと、15ヶ所!本書を通じて、広東省にある問屋街の多様さをぜひご体感ください!

鈴木 陽介  (著) 
問屋街オタクの深セン起業「ウラ話」: 華強北でハースタしています!! 問屋街オタクシリーズ Kindle版
本作は、問屋街オタクの直近3年間の奮闘記であり、修行録であり、舞台裏についてのお話しです。 さらに著者の過去の知見も加えた自伝記のような構成となっております。

鈴木 陽介  (著) 

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事