前回お伝えした通り、2019年 深圳デザインウィーク(SHENZHEN DESIGN WEEK) がいよいよ4/19-30 の期間に開催されます。
ところで、深センはユネスコ創造都市(UNESCO Creative Cities Network)のデザイン分野に指定され(日本は神戸市と名古屋市)、デザイナーの数・質が非常に高いのだそうです。
どうして深センはデザイナーのレベルが高いのでしょうか?
デザインウィーク開催に先立ち、深圳デザイン界のキーマンである、深圳グラフィックデザイン協会会長の宋博渊さんにインタビューを行いました。興味深い話が盛りだくさんです!
目次
宋博渊さん プロフィール
宋博渊(Song Boyuan)さんは、過去に日本の京都造形芸術大学に留学してデザインの勉強を行ない、その後日本のデザイン事務所で経験を積んだのち深センで「C&S BRAND」(陈宋品牌)というデザイン会社を立ち上げました。
この「C&S BRAND」は深圳デザインウィークのロゴや、北京オリンピックの一部デザインも担当するなど、深セン内外において大きな役割を果たしてきました。
宋さんは約10年日本におられたため日本語が流暢で、日本のデザイン界と太いパイプをお持ちです。
度々日本からデザイナー/アーティストを招待して講演会や展示会などを開催していることから、中国と日本の重要な架け橋となっています。
(去年にShenzhen Fanで特集した「IDEASPOT 2018」もその一つ)
そして、今回のデザインウィークでも日本人のデザイナー/アーティストの作品を展示する予定とのこと。(詳しくは後日別記事にて紹介します!)
現在、宋さんは深圳グラフィックデザイン協会(深圳市平面设计协会(SGDA))会長に就任され、多忙な日々を送っていますが
先日、時間を取り分けてインタビューに応じてくださり、深圳デザインウィークや深センにおけるデザインの歴史などの話を教えてくださいました!
インタビュー:深センとデザインの深い関係
ー まず、これまで深セン各地でデザインウィークを始めとしてたくさんの関連イベントが行われてきましたが、どうしてこんなに盛り上がっているのでしょうか?
デザイナーの数・質の高さ
まず、深センには各地から優秀なデザイナーが集まってきていて、デザイナーの数と質がとても高いのです。
中国の主要都市には特徴があります。 北京は現代アートが強く、上海は広告を得意とします。そして深センはグラフィックデザインが強いのです。
ー そうなんですか!どうしてそうなったのでしょうか?(確かに、ここ福田保税区域内にもたくさんのデザイン事務所があります)
いくつかの理由があります。
印刷産業の発展
まず、 80年代の経済改革開放が関係しています。印刷会社に対する大規模投資が香港→深センに対して行われたため、下請け印刷工場が多くなりグラフィック関係のデザイナーが増えました。
海外の印刷物を深センで印刷し、それを海外に輸出する、というパターンができあがったんですね。
その結果、印刷・パッケージ・紙製品が発達し、印刷産業が発展していきます。(※現在は土地価格上昇のため、印刷工場の多くは东莞市の方に移動しています)
製造業の発展
そして、製造業の発展も要素に含まれます。
ー 電子機器メーカーですね。アフリカ・東南アジアなど各国から人々が华强北に来て商品を購入しているのをよく見かけます。
はい。そういったメーカーが、(今まではコピー商品を作っていたのが)独自ブランドを次々と立ち上げていくようになりました。
その結果、企業イメージアップのため広告のニーズが増加し、ブランディングの仕事が増加していきました。
ファッションブランドもそうです。実は中国国内にあるファッションブランドの70%は、深センのブランドなのです。海外のブランド製造から自社ブランドへの脱皮を図ってきたのです。
ー そうなんですね!ファッションは広州のイメージの方が強かったのですが、広州はどうなのでしょうか?
広州は、卸売市場として発展していきました。そのため流通は強いのですが、実はブランドは弱いんですね。深センはブランドを重視する会社が多いのです。
新たなブランドを作っていくのは政府の方針
もう一つの要素は、政府の後押しがあるという点です。
深圳デザイン促進会が政府管理のもとに行われ、以下の各分野でデザイン協会が存在しています。
- グラフィックデザイン協会
- 工業デザイン協会
- ファッションデザイン協会
- 建築・インテリアデザイン協会
このような協会が設立されたことで、デザインの専門的な組織作りが行われ、若い人を育てる環境が作られました。
今では、建築も、インテリアも、ファッションも、ランドスケープ(景観)も深センが一番強くなり
それぞれの分野にとどまらず、街全体がデザインされてきたのです。
不動産会社
そして、不動産会社も大きな影響を与えてきましたね。
例えば、このような会社が挙げられます。
まず最初に観光やリゾート用地を開発します。その後、周辺に住宅を開発して文化的な産業要地にしていきました。
伝統がないため、実験的なことがなんでもできる
深センは歴史が浅く、数十年前は何もない状態でした。その後、国がこれらの不動産会社に土地を分配して、彼らは海外からの華僑のための場所を作ったのです。
この、歴史が浅いというのも大きな要因の一つです。
例えば、西安のような長い歴史がある都市は、開発を行う際には歴史的な事情を考慮に入れて、慎重に進めないといけません。
深センは伝統がないため、逆に実験的なことがなんでもできる都市になったのです。
ーなるほど!
宋さんの、深センのデザインに関する歴史を紐解いた深い説明に納得しました。
ここまでの要素があると、深センでデザインが発展したのはある意味必然だったのではないかと思われます。
C&S BRANDによる深圳デザインウィークの展示
宋さんは、C&S BRAND名義で深圳デザインウィーク中に以下の2つのエキシビジョンを開催されます。
- IDEASHOP 観念識集(深圳湾万象城)
- 粤港澳大湾区设计展(深圳两馆)
IDEASHOPは、日本人デザイナー/アーティストの作品を紹介しています。
粤港澳大湾区设计展は、「ビッグベイエリア(広東省+香港+マカオ)経済発展のための都市建築」というテーマで展示が行われるそうです。
詳しくは、近日中に特集いたします!
2019年深圳デザインウィークの開催場所等の情報は、以下の記事も参考になさってください。
深圳デザインウィークの準備でお忙しいところ、インタビューに応じてくださりありがとうございました!